世界的な大成功の裏で、この楽曲は苛烈な法廷闘争の渦中にも置かれた。ミュージシャンのサミ・チョクリ(サミ・スイッチ)側が、楽曲内の「Oh I」というフレーズの旋律が自身の楽曲からの盗用であると主張し、ロンドンの高等裁判所で著作権侵害訴訟を起こしたのだ。エド・シーランと共作者たちはこの主張を全面否定し、裁判で徹底的に戦う姿勢を見せた。
2022年の勝訴判決を経て、2026年の今日における音楽産業の視点からも、この裁判は記念碑的な意味を持っている。SNSやデジタルツールの普及に伴い、単なるフレーズの類似性を根拠にした根拠の薄い賠償請求が増加していた当時、裁判所が創作プロセスの正当性を認めたことは、全世界のソングライターにとって大きな防波堤となった。事前に90年代のヒット曲「No Scrubs」の著作者を権利者に追加登録するなどの慎重な権利処理が行われていた裏話も含め、リスク管理とクリエイティビティの均衡を保つ現代の音楽ビジネスモデルを確立させたと言える。