過酷な抗がん剤治療や隔離病棟での孤独。突如として襲いかかる命の危機に直面したとき、人間が精神的な支えを求めるのはごく自然な反応だ。どれほど科学的な根拠が乏しくとも、本人や家族にとって「少しでも可能性があるのであれば」「心が休まるのであれば」と選択してしまう心理は決して批判できるものではない。
アスリートの世界では、心身の極限状態を整えるために独自のルーティンや東洋医学、マインドフルネスを取り入れる例は少なくない。しかし、それが近代西洋医療(標準治療)の妨げになったり、患者の正しい医療判断を鈍らせたりするリスクがある場合、話は一変する。なべ氏のケースにおいても、「患者を思いやる純粋な善意」と「医学的に危険を孕む介入」の境界線がどこにあったのか、議論は紛糾した。