「タチ」という言葉を耳にした際、多くの人が疑問に思うのが語源のルーツと、日常的に使う「タチが悪い」という慣用表現との関係性です。結論から述べると、同性愛用語としてのタチと、慣用句の「タチが悪い」は、語源的に全く別の起源を持っています。
まず、同性愛におけるタチの語源は、日本の伝統芸能である歌舞伎の「立ち役(たちやく)」にあります。歌舞伎において、舞台上に立って所作や立ち回りを行い、物語を力強く引っ張る男性の主役を「立ち役」と呼びました。これに対して、座って伴奏を務める「座り役」や、たおやかに女性を演じる「女形(おんながた)」が存在します。昭和初期から戦後の風俗文化史において、男性的で活動的な役割を演じる側を「立ち役」、転じて「タチ」と呼ぶ隠語が定着していった経緯があります。
一方、日本語の慣用句である「タチが悪い」の「タチ」は、漢字で「質(たち)」と書きます。「性質」「体質」「生まれつきの傾向」を意味する言葉であり、「風邪のタチが悪い(治りにくい病勢)」「あの人は酒癖のタチが悪い(性分に難がある)」といった文脈で用いられます。言葉の響きが同じであることから「同性愛のタチは性格がきつい・質が悪いという意味なのか?」と誤認されるケースがありますが、これは明らかな誤解です。