棋士の身分を管理する公益社団法人日本将棋連盟にとっても、橋本氏の動向は前代未聞の事態であった。順位戦をはじめとする公式戦での実績を積み重ねてきた中心選手が、組織の規律や運営方針と衝突し、自ら去っていく――。
連盟という組織は、長年にわたり個人の自由な発言と団体の威信保持の間で揺れ動いてきた。橋本氏の主張は時に過激であり、組織としてのコンプライアンスや秩序を守らなければならない連盟側との温度差は埋まることがなかった。休盟手続きを経て最終的に棋士届出を提出するに至ったプロセスには、双方の妥協なき理念の対立が存在したのだ。