肉体が悲鳴を上げるなか、桑野をステージへ引き戻したのは音楽と仲間の絆だった。所属するジャパン・ミュージック・エンターテインメントの手厚いサポートを受けつつ、盟友・鈴木雅之が常に温かいエールを送り続けた。シャネルズ、そしてラッツ&スターとして日本の音楽シーンを塗り替えてきたふたりの絆は、病魔ごときで断ち切れるものではなかった。
2021年秋にはNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』への出演を果たし、見事な復活劇を披露。画面越しに見せた枯淡の味わいと情熱的な佇まいは、視聴者に深い感動を与えた。さらに鈴木の全国ツアーにゲスト出演し、ドゥーワップ・歌謡曲の黄金のリズムに乗せて再びトランペットを吹き鳴らした瞬間、会場は割れんばかりのスタンディングオベーションに包まれた。指先のしびれを意志の力でねじ伏せ、魂で奏でたその音色は、完全復活を告げる狼煙となった。