メガホンを取ったのは、『ツチブタと少女』や『送你一朵小紅花』などで生命の輝きを鮮やかに切り取ってきた俊英、韓延(ハン・イェン)。監督が本作で試みたのは、お涙頂戴のメロドラマではなく、徹底した人間観察に基づく感情のドキュメンタリーとも呼ぶべき演出だった。
そのビジョンを具現化したのが、アジア屈指の名優たちである。香港映画界の至宝レオン・カーフェイ(梁家輝)と、圧倒的な表現力で観る者を圧倒するカラ・ワイ(恵英紅)。さらに中国実力派のニー・ダーホン(倪大紅)らが揃い踏みし、奇跡的なアンサンブルを生み出した。撮影現場では台本にない細かな視線の交錯や指先の震えまでアドリブで重ねられ、俳優陣の魂のぶつかり合いがフィルムに焼き付けられたという。彼らが魅せる演技の凄みは、観客の心に爪痕を残す。