楽曲の大ヒットを受け、2013年には一迅社よりノベライズ作品『天ノ弱』(著:柄本和昭、原案:164、イラスト:鳥越タクミ)が刊行されました。楽曲の3分余りの中では描ききれなかった小説版のあらすじと裏設定の詳細は、歌詞の解釈をさらに深める重要な手がかりを提供しています。
小説版では、内向的で他者との関わりに臆病な主人公の青年と、天真爛漫でありながらどこか影を背負ったヒロインとの歪な関係性が描かれます。主人公は過去のトラウマから「他人に本心を晒せばいつか裏切られ、破滅する」という強固な不信感を抱えており、あえて相手を突き放すような悪態をついたり、冷淡な態度をとったりして自分を守ろうとします。
物語の核心となるのは、ヒロインが抱えていた過酷な運命と、それに対して主人公が最後まで「本物の言葉」を伝えられなかった悔恨のプロセスです。楽曲の歌詞にある「僕がずっと前から思ってる事」が、小説ではクライマックスの別れのシーンと精緻にリンクしており、なぜ彼が「友達に戻れたら」と願い、「はんたいことば」に逃げ込んでしまったのかという心理的バックボーンが克明に肉付けされています。
ノベライズを読んだファンの間では、「歌詞の解釈が単なる失恋ソングから、人間の実存的な孤独の物語へと昇華された」「小説を読んだ後に再び原曲を聴くと、GUMIの無機質なボーカルが主人公の押し殺した嗚咽のように聴こえて鳥肌が立つ」といった声が多く上がっています。楽曲と小説が互いを補完し合うメディアミックスの成功例として、本作は特筆すべき深みを有しています。