シネコンの規格化された快適さが映画鑑賞のデファクトスタンダードとなった現代において、なぜ塚口サンサン劇場はわざわざ新幹線や夜行バスを使ってまで訪れる価値のある場所として愛されているのでしょうか。その理由は、劇場スタッフの底知れぬ「作品への愛」と、観客を単なる消費者ではなく「共犯者」として巻き込むコミュニティ形成力にあります。
劇場の歴史は1953年の開館にさかのぼります。かつては地域密着のロードショー館として親しまれていましたが、2000年代以降のシネコン乱立によって大きな経営危機に直面しました。最新設備を備えたシネコンと同じ作品を同じように上映していては生き残れないという切迫した危機感の中で、同劇場が舵を切ったのが「ここでしか味わえない体験の追求」でした。
作品ごとに手作りされるロビーの展示物や看板、スタッフ自らが工夫を凝らしたプロモーションは、来館者の心を一瞬で掴みます。映画を観る前の高揚感から鑑賞後の余韻に至るまで、劇場空間そのものがひとつのエンターテインメントとして設計されているのです。ネットの口コミやSNS上では「塚口サンサン劇場の上映スケジュールを眺めるだけでスタッフの情熱が伝わってくる」「映画を大切に届けてくれる劇場」といった声が絶えず投稿されています。作品を単なる興行商材として消費するのではなく、作り手への敬意を込めて上映する真摯な姿勢こそが、全国の映画ファンを惹きつけてやまない根本的な要因です。