ファンコミュニティやネットメディアで定期的に持ち上がるのが、スーパー戦隊打ち切り危機の真相です。「玩具売上の低迷でシリーズ終了が検討された」「次作が最後になるのではないか」という言説がSNS上で拡散されることがありますが、これは単なる噂話なのでしょうか。関係者の証言と玩具業界の公開データを照らし合わせると、過去に幾度か「真の存亡の危機」が存在したのは紛れもない事実です。
最初の危機は、1977年の第2作『ジャッカー電撃隊』でした。ハードなクライムアクション路線が当時の幼児層に受け入れられず、視聴率低迷から35話で打ち切りに。これによりシリーズは一時休止を余儀なくされました。この窮地を救ったのが、米マーベル・コミックとの提携により1979年に制作された『バトルフィーバーJ』であり、ここで初めて導入された「巨大ロボット」の存在がシリーズを延命させたのです。
二度目の最大の危機は、1990年の『地球戦隊ファイブマン』放映時でした。少子化の加速やゲーム機の台頭により視聴率と玩具売上が大きく落ち込み、東映およびスポンサーサイドから「シリーズ終了」が真剣に議論されました。この崖っぷちで立ち上がったのが、プロデューサーの鈴木武幸氏とメインライターの井上敏樹氏でした。彼らが背水の陣で挑んだのが、前述の『鳥人戦隊ジェットマン』(1991年)です。戦隊メンバー同士の三角関係や裏切りを描いたトレンディドラマ路線は、従来のファンだけでなく大人の女性層をも巻き込み、驚異的な視聴率回復を遂げてシリーズの寿命を劇的に延ばしたのです。
2010年代後半から2020年代にかけても、バンダイナムコホールディングスの決算資料に示されるトイホビー部門の国内売上高において、スーパー戦隊関連は最盛期の200億円台から一時50億〜60億円規模へと縮小傾向を見せていました。配信メディアの多様化や動画配信プラットフォームへの子どもの流出が主因です。
しかし、東映とバンダイは打ち切りを選ぶのではなく、「大胆なターゲット層の拡張」という逆転の手を打ちました。『機界戦隊ゼンカイジャー』や『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』、『王様戦隊キングオージャー』といった作品群では、従来の未就学児だけでなく、青年層やハイターゲット層を意識した精緻なストーリーテリングと、大人の収集欲を刺激する「Memorial Edition」などの高単価トイを投入。打ち切りの危機を迎えるたびに、定石を破壊するクリエイティブの爆発によって生き残り続けてきたのが、このシリーズの真の強みです。