本作の看板を背負った綾瀬花日役の加隈亜衣と、高尾優斗役の斉藤壮馬の歩みは、日本の声優史においても特筆すべき飛躍を遂げています。
綾瀬花日を演じた加隈亜衣は、感情の起伏を押し殺さず、素直で一生懸命な少女の声を瑞々しく表現しました。当時の彼女はブレイク初期にあたりましたが、本作で見せた「照れや戸惑いを息づかいで伝える繊細な演技」が高く評価され、その後の大躍進へと繋がります。『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』のエリス役や、『ひろがるスカイ!プリキュア』の虹ヶ丘ましろ/キュアプリズム役など、芯の通った少女から母性あふれるキャラクターまで自在に演じ分けるトップ声優としての地位を確立しました。2026年現在も、確かな演技力と透明感ある声質で第一線を走り続けています。
一方、女子小学生の理想の男子像として社会現象となった高尾優斗を演じた斉藤壮馬の躍進も凄まじいものがあります。クールで大人びていながら、花日に対してだけ見せる不器用な優しさを絶妙なニュアンスで表現した演技は、当時の少女読者のみならず親世代のハートをも射止めました。
2026年現在の斉藤壮馬は、数々の主演アニメで声優アワードを総なめにするだけでなく、アーティストとしての独自の世界観や文芸・執筆活動でも高い評価を獲得し、文化人としての横顔も併せ持つ稀代の表現者へと成熟しました。近年演じる深みのある大人の男性役の根底にも、『12歳。』時代に培われた「相手との絶妙な距離感を測る芝居の間(ま口)」が生きています。
さらに、ライバルの小日向太陽を演じた花江夏樹は後に『鬼滅の刃』竈門炭治郎役で国民的知名度を得て、桧山一翔を演じた堀江瞬も『僕の心のヤバイやつ』市川京太郎役などで思春期の陰影ある少年を演じさせたら右に出る者はいない存在へと進化しました。花日の兄・陽介役を務めた村瀬歩も含め、本作は「2010年代半ばから2020年代後半の声優界を動かす主役たちの梁山泊」だったといっても過言ではありません。