ネット上の考察掲示板やSNSでは、「山の民はジャンプ漫画的なスーパーパワーを持った完全なファンタジー部族」と捉えられがちですが、これは半分正解で半分は誤解です。
実際の中国古代史において、秦軍が中原の六国(趙、魏、楚など)を圧倒できた最大の要因の一つは、西戎諸部族の騎兵戦力と軍馬の育成ノウハウを取り込んだ点にあります。当時の中原諸国は戦車戦から歩兵戦への移行期にありましたが、山岳や草原を駆け巡る遊牧・山岳部族の馬術は桁違いの機動力を持っていました。
また、「山の民は漢字や平地の言葉を話せない」という描写も、文化人類学的な観点から綿密に考証されています。秦の東側諸国が使用していた漢字文化圏に対し、西部の山岳地帯には独自の言語体系やトーテム信仰(仮面文化)が存在していました。作中で描かれるタジフの拙い言葉遣いや、バジオウが平地の言語を学んで通訳を務める描写は、異なる言語・文化集団が接触する際に見られる普遍的な歴史的実態を的確に反映しています。