鬼舞辻無惨が組織した十二鬼月は、瞳に数字が刻まれた上位6体の「上弦」と下位6体の「下弦」で構成されています。しかし、下弦が目まぐるしく入れ替わり、挙句の果てに無惨自らの手で解体されたのに対し、上弦の顔ぶれは113年間一度も変わることがありませんでした。この圧倒的な停滞と安定こそが、鬼殺隊にとって絶望の象徴となっていました。
公式記録集『鬼殺隊見聞録』の記述および作中の描写を分析すると、十二鬼月の序列は「入れ替わりの血戦」と呼ばれる公式な決闘制度によって定められています。下位の者が上位の者に果し合いを挑み、勝利すれば序列を奪うことが認められていましたが、上弦の枠内に限っては実質的な固定化が続いていました。童磨が後から鬼になりながら猗窩座を追い抜いて「上弦の弐」へ昇格した事例を除けば、上位陣の壁は下弦のみならず下位の上弦にとっても高すぎる障壁だったのです。
なぜ百年間も序列が崩れなかったのか。その本質は、「投与された無惨の血の量と順応度」に加え、鬼としての生存年数に伴う「人間の捕食数」の差にあります。下弦の鬼が生涯で数人から十数人の鬼殺隊士を喰らう程度だったのに対し、上弦の鬼たちは一人で歴代の柱を十数人から数十人単位で葬り続けてきました。柱を喰らうことで得られる莫大な力と、死線をくぐり抜けて磨き上げられた戦闘経験が自己増殖的に積み重なり、新陳代謝を拒絶する絶対的な格差が形成されていたのです。