今回の独自取材で浮き彫りになったのは、渋谷という街における蕎麦の「二極化と深化」だ。若者の街というパブリックイメージの裏側で、長年暖簾を守り続ける老舗の十割蕎麦から、深夜2時を過ぎても本枯節の出汁香る一杯を提供する隠れ家まで、独自の美学を持った店が共存している。
例えば、道玄坂の雑居ビルの奥深く。重い扉を開けると、そこには白木のカウンターが広がり、店主が自ら石臼で手挽きした蕎麦を丹念に茹で上げる光景がある。つなぎを一切使わない生粉打ち(十割)でありながら、絹のようにしなやかな喉越し。あるいは、神南の裏通りでひっそりと営業する深夜処では、酒肴で季節の天ぷらをつまんだ後、締めとして供されるせいろが夜更けの胃壁を静かに癒やす。流行の移り変わりが異常なまでに早い渋谷だからこそ、奇をてらわず本質を突き詰めた一杯が、感度の高い食通たちの間で確固たる支持を集めているのだ。