インターネット上の口コミやグルメサイトを開くと、「写真以上のボリュームで言葉を失った」「カニがまるごと乗っていて採算が合っているのか心配になる」といった絶賛のコメントが並びます。果たしてこの評判は過度な演出なのか、それとも紛れもない真実なのでしょうか。現地での実食調査および仕入れ構造の分析から、その実態が浮き彫りになってきました。
看板メニューである「海鮮丼」を注文してまず圧倒されるのは、立体的にそびえ立つネタの層です。丼の中心に鎮座する紅ズワイガニの爪や脚、甘エビ、イクラ、ウニをはじめ、境港や美保湾で早朝に水揚げされたばかりのブリ、タイ、アジ、サーモンなど、10種類以上におよぶ肉厚な魚介が器を完全に覆い尽くしています。「ご飯でかさ増ししているのではないか」という穿った見方は、箸を入れた瞬間に打ち砕かれます。刺身を何枚も食べ進めなければ白米に到達できないほどの密度を誇り、一般的な都市部の海鮮丼と比べても魚の総重量は優に1.5倍から2倍に達します。
2026年現在、原材料費や物流コストの高騰が外食産業を直撃するなかにあっても、味処まつやの海鮮丼は税込み2,000円台前半から中盤という驚異的な価格帯を維持しています。これほどの一杯を観光地価格に毒されずに提供できる背景には、母体である「松谷水産」の存在があります。境港の買受人として直接セリ落とした鮮魚を自社の加工ルートからダイレクトに店舗へ搬入するため、中間コストを極限まで削ぎ落とすことができるのです。「地元で獲れたものを、最高の鮮度と庶民的な価格でお腹いっぱいに食べてほしい」という創業以来の愚直な姿勢が、噂に違わぬコストパフォーマンスを支えています。