那田蜘蛛山編で初登場した際、視聴者の耳目を釘付けにしたのが「もしもーし 大丈夫ですか?」という軽やかな問いかけでした。ufotableによる美麗な映像演出と、声優・早見沙織さんの透明感あふれる穏やかなトーンが相まって、一見すると慈愛に満ちた救済者のように映ります。しかし、直後に蜘蛛の鬼(姉)へ向けられた「仲良くするための拷問」の提案に見られる通り、その実態は容赦なき処刑宣告でした。
水柱・冨岡義勇に向けた「そんなだからみんなに嫌われるんですよ」という辛辣なフレーズも、読者の間で屈指の人気を誇る名場面です。感情を表に出さず孤立しがちな義勇の不器用さを正確に突き刺すこの言葉は、軽妙な掛け合いとしてのコミカルさを漂わせつつも、鬼殺隊内部の人間関係や各柱の気質を冷徹な観察眼で見抜いていた彼女の知性を如実に表しています。
公の場や任務中において、彼女は常に鈴を転がすような笑声を絶やしませんでした。怒りや憎悪といった生々しい感情をあえて抑制し、完璧に制御された笑顔を張り巡らせる態度は、鬼殺の任務を完遂するための高度なプロフェッショナリズムであると同時に、内面の激しい葛藤を外部から遮断する頑丈な防壁でもあったのです。