大分名物として親しまれるとり天の発祥は、昭和初期に別府市内のレストラン(東洋軒など)で誕生したと伝えられています。当時、少し固かった鶏肉を美味しく手軽に食べられるよう、工夫を重ねて生まれたのが天ぷらスタイルの調理法でした。
鶏むね肉がパサつかず、驚くほど柔らかく揚がる最大の理由は「肉の繊維を断ち切るカッティング」と「酒・醤油・ニンニク・生姜を揉み込んで保水性を高める下処理」にあります。鶏むね肉は加熱によって筋繊維が収縮し、内部の水分が外へ絞り出されることでパサつきが生じます。これに対し、繊維に対して直角に包丁を入れる「削ぎ切り」を行い、下味に含まれるアルコールや塩分でタンパク質を適度にほぐして水分を閉じ込めることで、加熱後もふっくらとした弾力が保たれます。
さらに、衣が肉全体を隙間なくコーティングしてスチームオーブンのような蒸し焼き状態を作り出すため、旨味エキスを一切逃さずに極上のしっとり感を生み出せるのです。