「熱は平熱に戻ったのに、なぜか体がだるい」「階段を少し上っただけで息が切れる」。職場や学校へ復帰した直後、このような強い疲労感に戸惑う声が多く聞かれます。知恵袋やSNS上でも「熱が下がったのに仕事にならない」「怠けていると思われないか不安」という相談が絶えません。しかし、この病み上がりに生じる「だるい」「倦怠感」には明確な生理学的理由が存在します。
最大の要因は、免疫系が放出した「炎症性サイトカイン」の残存です。ウイルスや細菌を排除するために体内で激しい免疫戦闘が行われた後、血液中には微小な炎症物質がしばらく漂い続けます。これが中枢神経に働きかけ、脳に「まだ体を休めさせよ」というシグナルを送り続けるのです。これは怠慢ではなく、生体が体を保護しようとする防衛本能( sickness behavior )にほかなりません。
さらに見逃せないのが、数日間の臥床(ベッドで寝ている状態)による急速な筋肉量の減少と自律神経の脱調です。運動生理学の臨床データによれば、完全安静状態を3日間続けるだけで、下肢の抗重力筋は約1〜1.5%萎縮し、心肺機能も低下します。寝たきりの状態から急激に満員電車に乗ったり、8時間のデスクワークに突入したりすれば、心血管系と自律神経に過大なストレスがかかり、急激な倦怠感やめまいを引き起こすのは自明の理です。