SNSや口コミサイトを調査すると、「脂がクドすぎて胸焼けした」「独特の動物臭さが鼻についてまずかった」というネガティブな感想が一定数見られます。フードジャーナリズムの現場視点から断言すれば、その不快感の原因は肉質そのものではなく、「油つぼ(あぶらつぼ)」と呼ばれる特有の器官の未処理、もしくは熱処理不足にあります。
油つぼとは何か?なぜ取り除く必要があるのか
油つぼとは、鳥類の尾骨背面に位置する一対の黄色い小粒状の分泌腺(尾脂腺 / びしせん)のことです。鳥はここから分泌される油をくちばしで全身の羽に塗りつけ、撥水性を保ち、羽毛の衛生を維持しています。
この油つぼにはワックスエステルなどの脂質成分が極度に濃縮されており、加熱すると酸化した強い獣臭や独特のエグみを放ちます。スーパー等で安価に販売されている未処理のぼんじりをそのまま加熱調理してしまうと、油つぼから悪臭が溶け出し、周囲の肉全体を汚染してしまうのです。「ぼんじりが苦手」と語る人の大半は、この油つぼが残った粗悪な仕込みのものを口にしてしまった経験に起因しています。
専門店の仕込み工程と臭み取りの極意
名店と呼ばれる焼き鳥専門店では、串を打つ前に膨大な時間をかけて以下の仕込み手順を徹底しています。
- 油つぼの摘出:肉の先端付近にある黄色い脂の塊(2つの小粒)を目視で確認し、包丁の刃先や骨抜き(ピンセット)を用いて傷つけずに完全にえぐり取る。
- 尾骨・軟骨の選別処理:中心に通っている硬い尾骨を縦に割り、不要な骨片を除去する。職人によってはあえて微細な軟骨を残し、食感のアクセントとして活かす設計を行います。
- 血抜きと余分な水分の除去:冷水や酒水で軽く揉み洗いして微細な血塊を流し、厚手のペーパータオルで完全に脱水する。
この工程を経ることで、鼻につく獣臭は完全に消滅し、鶏肉本来の澄んだ脂の甘みと香ばしさだけが残る状態が整います。