梅を仕込んでから2〜3日の間に、梅の浸透圧によって内部のエキスが外に染み出し、液体が溜まってきます。これを「白梅酢(しろうめず)」と呼びます。しかし、環境によってはこのプロセスが滞ることがあります。ここでは梅酢が上がらない時の対処法と、梅干し作りでカビが生える理由と対策を詳細に解説します。
梅酢が上がらない最大の原因は、「重石の重量不足」「梅の追熟不足による水分不足」「空気が入りすぎて塩が溶けていないこと」の3点です。仕込みから3日経っても袋の底にわずかしか液体が溜まっていない場合、そのまま放置すると空気に触れている梅の表面からカビ殖が始まります。この時のレスキュー策として有効なのが「呼び酢」です。
35度ホワイトリカー大さじ2と、市販の純米酢または白梅酢大さじ2を混ぜ合わせ、ジップロックの中に回し入れます。その後、重石の重量を一時的に2kg(梅の重量の2倍)に増やし、袋全体を軽く揺すって塩を溶かします。浸透圧のトリガーが引かれることで、24時間以内に梅酢が一気に上がってきます。梅全体が完全に梅酢に浸かったら、重石の重さを梅と同量の1kgに戻し、潰れを防止してください。
万が一、表面に白い膜のようなものが浮かんできた場合、それは多くの場合カビではなく「産膜酵母(さんまくこうぼ)」と呼ばれる酵母菌の一種です。毒性はありませんが、放置すると風味を損ないます。見つけ次第、清潔なスプーンで静かにすくい取り、ホワイトリカーを大さじ1〜2吹きかけて袋内のアルコール濃度を高めてください。一方、青緑色や黒色の綿毛状の塊が見られた場合は真正のカビです。感染した梅とその周辺の梅酢を惜しまず除去し、残った梅をホワイトリカーで洗い直す処置が必要となります。
鮮やかな紅色と爽やかな香りをつけたい場合は、梅酢が完全に上がった段階で赤紫蘇を加えます。赤紫蘇の分量とアク抜き方法における黄金律は、梅1キロに対して赤紫蘇の生葉80g〜100g(梅の重量の8〜10%)です。葉を水洗いして完全に乾燥させた後、葉の重量の約18%の塩を2回に分けて揉み込みます。1回目の塩揉みで出る濃い紫色の濁った汁は強いエグみ(アク)を含むため、手で力強く絞って完全に捨ててください。2回目の塩揉み後、再び硬く絞った赤紫蘇に上がってきた白梅酢を少量かけると、アントシアニン色素が酸に反応して一瞬で鮮烈な赤色に発色します。この赤紫蘇と赤梅酢をジップロックに戻し入れ、土用干しの時期まで冷暗所で静かに寝かせます。