『純恋歌』を語る上で避けて通れない最大の謎が、1番のAメロに登場する「パスタ作ったお前」の正体です。長年、ネット掲示板やSNSでは「若旦那の元妻であるシンガーソングライターのMINMIではないか」という説が根強く囁かれてきました。二人が2007年に結婚を発表し、音楽シーンを代表するビッグカップルとなった時期が近かったことも、その憶測に拍車をかけた要因です。
しかし、当時の音楽誌インタビューや自著、テレビ特番における若旦那本人の証言を検証すると、この噂は明確な事実誤認であることがわかります。若旦那自身が語ったエピソードによると、このリリックのモデルとなったのは、湘南乃風としてブレイクする前、貧困にあえぐ下積み時代に付き合っていた「一般人の元恋人」でした。
当時の若旦那は、音楽活動で生活が成り立たず、明日の見えない鬱屈とした焦燥感を抱えていました。ある日、腹を空かせて帰宅した部屋で、冷蔵庫のわずかな残り物を使って手際よくパスタを作ってくれた彼女の姿に、彼は言葉を失うほどの衝撃と温もりを覚えたといいます。「高級レストランの贅沢な料理ではなく、ありふれた家庭用パスタに込められた無償の愛」こそが、あの歴史的フレーズの真実でした。決して美化されたファンタジーではなく、極限状態の中で感じた泥臭い感謝の念が、名曲の原点となっていたのです。