「容量制限の範囲内の製品を買ったはずなのに、なぜか保安検査で止められてゴミ箱行きになった」
SNSやネット掲示板上では、こうした旅行者の憤りや嘆きの声が後を絶ちません。現場を取材すると、モバイルバッテリー手荷物没収の引き金となっている原因の多くは、容量の計算ミスではなく「物理的な印字の消失」という意外な落とし穴にあります。
保安検査場の現場において、検査員は1人あたり数十秒という極めて限られた時間の中で危険物の有無を判定しなければなりません。X線モニターでバッテリーの影を検知した検査員は、乗客の手荷物を開け、本体裏面に記載されたスペック表を目視で確認します。この際、長年の使用によって表面のプラスチックが擦れ、定格容量を示す「mAh」や「Wh」の数字が消えかかっていると、検査員はその場で持ち込み不可の判断を下さざるを得ません。
「自分が使っていて安全だと知っている」という個人の主張は、国際的な安全基準の前では一切通用しません。航空法上、スペックが視認できないバッテリーは「容量不明の危険物」として扱われ、160Wh超の製品と同等に見なされてしまうからです。特に海外のハブ空港では一切の例外や温情措置は認められず、その場で放棄同意書への署名を求められることになります。
また、「出張用とプライベート用でスマホとタブレットを複数台持ち歩いているため、合計4個のバッテリーを持っていた」というビジネスマンが、100Wh超のバッテリーを複数所持していたことで機内持ち込みモバイルバッテリー何個までという制限に引っかかり、2個を残して泣く泣く手放すケースも散見されます。