NSR50がレーシングユースやワインディングで無類の強さを誇った最大の要因は、その心臓部にあります。原付一種の自主規制上限である規制前7.2馬力を絞り出すAC08E型水冷2ストローク単気筒エンジンは、わずか50ccとは思えない強烈なパワーバンドと鋭い吹け上がりを実現していました。
1987年から1999年の生産終了に至るまで、NSR50は幾度もの改良を受けています。中古車選びやレストアにおいて極めて重要となるのが、通称「前期型」と「後期型」の設計変更です。
1987年から1994年までに生産された前期型(1型〜3型)は、アナログ点火CDIを採用し、ピーキーでダイレクトなエンジン特性が特徴です。足回りや電装系は比較的シンプルで、キャブレターセッティングに対するエンジンのツキが分かりやすいと評されました。
対して、1995年以降に登場した後期型(4型以降)は、ワークスマシンさながらの進化を遂げました。マップ制御によるデジタルCDIが導入され、中低速トルクと高回転の伸びが大幅に向上。さらに、フロントフォークトップキャップの減衰調整構造、強化されたトップブリッジ、クラッチ板の4枚化、シートレール形状の変更など、NSR50の前期・後期の違いは車体剛性と操縦安定性の劇的な向上をもたらしました。現在でもサーキット派の間で後期型フレームが高値で取引されるのは、この剛性バランスの完成度に理由があります。