年齢制限が迫る中での不合格は、一度は伊角から碁盤に向かう気力を奪い去りました。院生を辞め、自室に引きこもる日々を送っていた伊角を救ったのは、「このまま囲碁を諦めたくない」という心の底から湧き上がる情熱でした。退路を断った彼は、世界最強を誇る中国棋院への武者修行という大きな決断を下します。
言葉も通じない異国の地で出会ったのが、中国棋院所属の実力派棋士・楊海(ヤン・ハイ)でした。楊海は伊角の確かな実力を認めつつも、勝負の瀬戸際で自滅してしまう精神的な弱点を見抜きます。そこで楊海が授けたアドバイスは、技術論ではなく「思考の転換」でした。
「どんな局面でも、目の前の一手に全力を尽くす」「過去のミスや未来の不安に囚われず、盤上だけに集中する」。過酷な環境とハイレベルな若手たちとの連日の対局、そして楊海の温かくも的確な導きにより、伊角は自らを縛り付けていた雑念を振り払い、強靭なメンタルタフネスを手に入れていきました。