なぜ「居酒屋」ではなく「居酒商」なのか。この問いを掘り下げると、日本の江戸期商業史に連なる深淵なルーツに行き当たる。江戸時代、酒屋の店先で量り売りの酒をその場で飲ませた「居続け(居酒)」の商いは、町人文化と商人の気概が結びついた独自の経済圏を形作っていた。
古典家が掲げる「商」の文字は、仕入れ先である蔵元への敬意と、客に対して嘘のない適正価格で極上の体験を届けるという、商人道(マーチャント・スピリット)の表明に他ならない。資本力に頼らない個店が、自らの審美眼だけで勝負する姿勢。それこそが、この店の根幹を支える背骨となっている。