ネット上の掲示板やSNSでは長年、「二宮和也はドラマのキスシーンでアドリブを仕掛けたことがあるのではないか」という噂が囁かれてきました。飄々としたキャラクターと、「台本は現場に持ち込まない」「相手の出方次第でセリフのトーンを変える」という天才肌のエピソードが一人歩きした結果生まれた言説ですが、報道関係者や現場スタッフの証言を辿ると、全く異なる実態が浮かび上がります。
結論から言えば、二宮和也が事前の打ち合わせや合意なしにキスシーンで突発的なアドリブを敢行した事実は一切ありません。映像制作の現場において、ラブシーンや接触を伴う芝居は、照明の角度、カメラのアングル、カット割りに至るまでミリ単位で計算されています。特に近年はインティマシー・コーディネーターの導入が進むなど、俳優間の合意形成が極めて厳格化されていますが、二宮は20代の頃から共演女優に対する礼節とプロ意識を徹底していました。
では、なぜ「アドリブではないか」と囁かれるのか。その理由は、二宮の芝居が持つ圧倒的な「段取り感のなさ」にあります。芝居の直前までスタッフと雑談し、本番のブザーが鳴った瞬間に役へ沈み込む二宮は、動作の合間に挟む「視線の泳ぎ」「唇のわずかなためらい」「息を吸い込む間」を極めて自然にコントロールします。これが視聴者に対して「台本に書かれていない突発的な行動に見える」という心地よい錯覚を生み出しているのです。
共演経験のある複数の女優も、インタビューで「二宮さんはこちらの動きをすべて受け止めてくれるため、緊張せずに委ねられる」と口を揃えています。アドリブで相手を驚かせるのではなく、事前の段取りを完全に体得した上で、あたかも今その瞬間に感情が溢れ出たかのように見せる技量こそが、二宮和也の真骨頂です。