かつて平成の深夜カルチャーを象徴していたファミレスの終夜営業は、なぜ完全に幕を下ろすことになったのでしょうか。すかいらーくホールディングス(ガスト・バーミヤン・ジョナサンなど)やロイヤルホストが相次いで発表した営業時間の短縮および深夜営業の全面撤廃は、単なる一時的な防衛策ではなく、外食産業のビジネスモデルそのものの構造改革でした。
最大の要因は、深刻化する人手不足と労務管理コストの高騰です。労働基準法に基づく深夜労働(22時〜翌朝5時)に対する25%以上の割増賃金の支払いに加え、夜勤専従スタッフの採用難は年々厳しさを増しました。かつては深夜帯に数名の客が滞在していても人件費を賄えていましたが、最低賃金の大幅な引き上げと深夜割増が重なったことで、深夜数時間の赤字が日中の黒字を圧迫する歪な収益構造が生じていたのです。
加えて、消費者のライフスタイルの不可逆的な変化も見逃せません。インターネットカフェや24時間営業のフィットネスジム、コンビニ中食の品質向上、さらには在宅勤務の普及や飲み会文化の縮小により、「終電を逃してファミレスで朝まで時間を潰す」という利用形態そのものが激減しました。関係者の取材証言によれば、客単価数百円のドリンクバーで数時間滞在する顧客層への対応コストや治安維持リスクを考慮した際、深夜帯を閉鎖して従業員の労働環境を改善する決断は、経営判断として極めて合理的だったと振り返られています。