水道民営化反対派が最も強く主張する論拠が、水道民営化の海外失敗事例と、それに伴う水道事業の再公営化の潮流です。
1980〜1990年代にかけて世界銀行の主導などで民営化が進んだ欧州や南米では、数々の深刻な問題が発生しました。
- パリ(フランス):1985年に大手水メジャーへ運営委託された後、25年間で水道料金が約2.6倍に高騰。設備の再投資が不十分で情報開示も不透明だったことから、契約満了に伴い2010年に完全公営化(再公営化)へ回帰。
- コチャバンバ(ボリビア):1999年の民営化直後に料金が倍増し、庶民の生活が困窮。大規模な暴動(水戦争)に発展し、わずか数か月で契約解除に追い込まれた。
- 英国(イングランド・ウェールズ):完全売却型民営化を実施した結果、過度な株主配当と借入金経営が常態化。下水流出事故の多発や老朽配管放置が社会問題化し、厳しい再規制や公的管理強化が議論されている。
これらの失敗事例に共通するのは、「利益優先による維持管理費の削減」「独占企業に対する行政側の監視(モニタリング)能力の破綻」「不透明な契約内容」です。グローバル水インフラ大手のヴェオリア・ジャパンをはじめとする事業者が参画する日本市場においては、海外の教訓をどう制度設計に落とし込んでいるかが厳しく問われています。