エビの下処理は、取り扱うエビの品種や流通形態によっても微調整が求められます。スーパーの水産コーナーで双璧をなす「ブラックタイガー」と「バナメイエビ」、そして近年主流となっている冷凍品には、それぞれ特有の物理的性質が存在します。
高度経済成長期からハレの日のごちそうとして定着したブラックタイガー殻付き下処理の経緯を辿ると、その肉厚で筋線維が太い肉質ゆえに、下処理の精度がダイレクトに歯応えへ影響することが知られています。ブラックタイガーは殻が硬く背ワタも太いため、太めの竹串を用い、第2関節からしっかりと引き抜く必要があります。一方で、現在流通の主流を占めるバナメイエビ殻付き下処理の基本は、殻が柔らかく身質が繊細である点への配慮が不可欠です。強い力で爪楊枝を動かすと殻ごと身がちぎれるリスクがあるため、ごく細い爪楊枝で優しく針先を滑り込ませる技術が適しています。
また、家庭で扱う機会が最も多い冷凍殻付きエビ解凍と下処理方法においては、解凍アプローチの選択が生死を分けます。真水に直接浸して解凍すると、浸透圧の差によってエビの細胞膜が破壊され、旨味成分であるグルタミン酸やグリシンがドリップとして大量に流出します。プロが実践する鉄則は、海水に近い「3%濃度の塩水(水500mlに対して塩15g)」に氷を数個浮かべ、約15〜20分間浸して半解凍状態へ導く手法です。細胞組織へのダメージを最小限に抑え、採れたてのような弾力を保ったまま前述の背ワタ抜きや片栗粉洗浄へ移行できます。