過熱する自転車カスタムはやがて、過激化の一途を辿る。ハンドル幅を極端に狭め、垂直近くまで立ち上げた通称「鬼ハン(鬼の角のようなハンドル)」や「絞りハン」の登場だ。だが、こうした過度な改造は操縦性を著しく低下させ、ブレーキ操作の遅れや転倒事故を引き起こす原因ともなった。
当然ながら、警察当局も黙ってはいなかった。道路交通法において、自転車は「軽車両」に分類される。ハンドル幅の極端な変更やブレーキの制動性能の低下、夜間の無灯火運転などは、警察官による街頭指導や取り締まりの対象となった。学校現場でも厳しい校則が敷かれ、抜き打ちの自転車点検で「カマキリハンドル禁止」が言い渡される風景は、当時の日常茶飯事だった。
それでも少年たちは、指導をすり抜けるようにハンドルの角度を微調整し、放課後の街へと繰り出した。ルールと反抗の狭間で繰り広げられた攻防戦は、当時のヤンキーたちにとって、大人社会へのささやかな抵抗の儀式でもあったのだ。