日本食研が家庭用調味料市場へ本格参入を果たした1989年当時、焼肉のたれ市場はエバラ食品工業の「黄金の味」やモランボンの「ジャン」といった先行大手ブランドが市場シェアの約70%以上を独占する絶対的な激戦区でした。業務用の調味料分野では圧倒的なシェアを誇っていた同社ですが、一般家庭における知名度はほぼゼロに等しい状態からのスタートを余儀なくされていました。
そこで創業者の大沢一彦氏をはじめとする開発・宣伝チームが打ち出したのが、「とにかく一度聴いたら絶対に忘れられないフレーズで、スーパーの精肉売り場での指名買いを狙う」という強烈なゲリラ的プロモーション戦略でした。
キャッチコピーの元ネタとなったのは、当時ホットプレートの普及とともに家庭内でブームとなっていた「おうち焼肉」におけるリアルな生活実態です。煙や油跳ね、火の元の扱いに気を揉む主婦層のインサイトと、親父ギャグのような駄洒落(焼肉を焼く/家を焼く)を掛け合わせ、「焼肉は楽しく家庭で食べてほしいけれど、火の用心だけは忘れないで」というユーモア溢れるメッセージへと昇華させました。美味しさのシズル感を前面に出す従来型の食品CMの常識を根底から覆したこの試みは、瞬く間に全国の視聴者の記憶へ刻み込まれることとなりました。