現場を知るプロフェッショナルたちは、一般家庭での安易な劇薬投入に一貫して警戒の目を向けている。国家資格を持つ配管技能士や、長年インフラを支えてきた水道設備工事業者のもとには、DIYによる惨劇のリカバリー案件が日常茶飯事として持ち込まれる。
「朝起きたら階下の天井から茶色い水が滴り落ちてきた、という要請で駆けつけると、シンク下のS字トラップが抜け落ちている。見れば粉末クリーナーの過剰使用による熱変形。配管を丸ごと引き直すしか手がありません」と、都内の設備業者は語る。かつて人気テレビ番組『大改造!!劇的ビフォーアフター』などで白日の下に晒されたような、経年劣化した築古住宅の配管であれば脆さはなおさらだ。
加えて、定期清掃に入るハウスクリーニングの現場でも細心の注意が払われる。高圧洗浄機を併用する際、事前に薬剤で熱ダメージを受けた配管は水圧に耐えきれず破裂する危険性がある。業者が最も恐れているのは、見えない床下で人知れず配管が歪み、数週間から数ヶ月をかけて徐々に汚水が基礎へ染み出していく「サイレント漏水」の被害なのだ。