館内を歩くと、突如として時空が歪んだかのような錯覚に囚われる。1912(大正元)年の駅開業時に造られた「1912階段」と、1935(昭和10)年に鉄道博物館の開館に合わせて新設された「1935階段」が今なお現役で遺されているのだ。
重厚な花崗岩とタイルで構成された階段の角は、100年以上の間に無数の人々が足を踏み鳴らしたことで滑らかに磨り減っている。壁面に刻まれたわずかな傷や煤の跡すらも、この都市が潜り抜けてきた時代の息遣いそのもの。手すりに触れた瞬間、大正ロマンの風がすっと吹き抜けるような錯覚を覚える。