日本近代文学史において、彼の立ち位置はきわめて独特だ。太宰治が自己の破滅や弱さを私小説的にさらけ出したのに対し、彼は漢文学の緻密な素養と西洋論理学を融合させ、普遍的な人間の業を描き出した。甘美な感傷を排し、冷徹なまでの客観性と美麗な漢文調の文脈で構築された世界観は、当時から異端の輝きを放っていた。
この緻密で硬質な文体こそが、現代のエンタメ作品におけるダークファンタジーの先駆的要素として再発見されている。現実の残酷さと神話的幻想が交錯する彼の物語構造は、時代を超えてクリエイターたちの創造力を刺激し続けているのだ。