「自然をねじ伏せるのではなく、森の呼吸に人間の都合を合わせる。それがここを作った原点です」
そう語るオーナーの薮内敏樹氏の眼差しは、静かだが揺るぎない。かつて荒れ果てた山林だったこの土地を自らの手で切り拓き、木を植え、小川の流れを整えて現在の楽園を築き上げた人物だ。薮内氏が目指したのは、単にお腹を満たす飲食店ではない。訪れた者が木々の放つフィトンチッドを全身に浴び、鳥のさえずりに耳を澄ませながら魂を再生させる「森林浴リゾート」の具現化だった。
ウッドデッキの配置ひとつ取っても、既存の大木を一本も切らず、樹木の枝振りに合わせて床板をくり抜く徹底ぶり。テラス席に腰を下ろせば、まるで森の樹冠に浮かんでいるかのような浮遊感を味わえる。この細部への異常なまでのこだわりが、来訪者の心を掴んで離さない。