ダチョウ倶楽部のリアクション芸が長年愛された最大の理由は、いじめや暴力に見えない「圧倒的な愛嬌と信頼関係」にありました。テレビ業界関係者や共演者の証言を丹念に掘り起こすと、スタジオの裏側で行われていた綿密なコミュニケーションが浮かび上がってきます。
長年ダチョウ倶楽部と共演を重ねてきた出川哲朗さんは、過去の追悼特番やインタビューで次のように語っています。
「竜さんの『押すなよ』は、現場の全員に対する合図なんです。カメラマン、照明さん、そして後ろに立つ肥後さんやジモンさん全員が呼吸をひとつにする。タイミングが1秒でもズレたら台無しになる。あの阿吽の呼吸は、何十年も一緒に修羅場をくぐり抜けてきたダチョウ倶楽部だからこそできた神業でした」
実際に、後ろから背中を押す役を担う肥後克広さんと寺門ジモンさんの集中力は凄まじいものがありました。上島さんがどの角度で足を踏ん張っているか、呼吸を吸ったか吐いたかを背中越しに察知し、最も安全かつダイナミックに湯船へ飛び込めるベクトルへと力を加えていたのです。
SNSやネット掲示板上でも、「子どもの頃はただ笑っていたけれど、大人になって見返すと全員の視野の広さとプロ意識に鳥肌が立つ」「誰一人として相手を傷つけようとしていない、優しさに満ちた空間だった」という声が数多く寄せられています。この温もりこそが、過激な罰ゲーム企画が淘汰されていった平成から令和のコンプライアンス変革期を乗り越えられた本質的な理由です。