退職後、多くの人が最も頭を悩ませるのが「健康保険をどうするか」という選択です。日本の医療保険制度において、会社を辞めた後の選択肢は基本的に「前の会社の健康保険を任意継続する」「地域の国民健康保険に加入する」「家族の扶養に入る」の3通りしかありません。配偶者や親の扶養に入れる基準(年収130万円未満など)を満たさない場合、実質的には健康保険任意継続と国民健康保険の比較を行い、保険料の安い方を選ぶことになります。
この二者択一を感覚で決めるのは非常に危険です。健康保険の任意継続は、これまで会社が半分負担してくれていた保険料を全額自己負担(2倍)して最長2年間継続する仕組みですが、標準報酬月額には上限(各健保組合ごとに設定、協会けんぽの場合は上限あり)が設けられています。一方、国民健康保険料は前年の所得をもとに各自治体独自の料率で算出されるため、前年の年収が高い人は退職1年目の保険料が跳ね上がる構造になっています。
併せて忘れてはならないのが、厚生年金から国民年金切り替え手続きへの移行です。配偶者が第3号被保険者(扶養)だった場合、自分だけでなく配偶者も一緒に第1号被保険者への種別変更が必要になります。2026年度の国民年金保険料は月額1万7,000円台で推移しており、夫婦2人であれば毎月約3万5,000円の固定支出です。もし失業により納付が困難な場合は、放置して未納にするのではなく、窓口で「保険料免除・納付猶予申請」を行うことが将来の障害年金や遺族年金の受給権を守る生命線となります。