歴代興行収入ランキングを語る上で、インターネット掲示板やSNSで定期的に紛糾するのが、「昔の映画の順位が低すぎるのではないか」という疑問です。ここには、映画興行の集計ルールに関する決定的な歴史的盲点が存在します。
実は、日本映画製作者連盟(映連)が興行データの発表基準を現在の「興行収入(映画館の入場料金の総額)」に一本化したのは、2000年以降のことです。それ以前の1999年までは、劇場入場料から映画館側の取り分を差し引いた、映画会社(配給会社)側の取り分である「配給収入」のみが公表されていました。
配給収入はおおむね興行収入の50%〜60%程度に相当します。例えば、1989年公開のジブリ作品『魔女の宅急便』の配給収入は21.5億円ですが、これを現代の興行収入に換算すれば約43億円規模になります。初期の『ドラえもん』映画や1980年代の角川アニメーション映画などが歴代ランキングの上位に顔を出さないのは、当時の公表データが「配給収入」のままであり、興行収入としての公式記録が存在しない、あるいは推計値として扱われているためです。この算出基準の断絶を理解していなければ、映画史における興行規模を正確に読み解くことはできません。
もう一つの議論の的が、「入場者特典による興行収入のインフレ批判」です。週替わりで異なるイラストカードや設定資料集、限定コミックを配布する手法に対し、「純粋な映画の評価ではなく、特典目当ての複数回購入で数字を吊り上げているだけだ」という厳しい声がSNS上で散見されます。一方で、「劇場へ足を運んでくれた熱心なファンへの正当な還元であり、映画館の存続を支えるビジネスモデルとして正当」と擁護する声も根強く存在します。映画が「1回観て終わる作品」から「コレクションや体験を含む総合パッケージ」へと進化した証左でもありますが、特典の有無によって興行推移が乱高下する現象は、現在の映画ビジネスが抱える功罪両面を浮き彫りにしています。