除細動とは何か?心臓を動かさず止める驚きの仕組みと最新救命手順

除細動とは何か?心臓を動かさず止める驚きの仕組みと最新救命手順

除細動とは何か?心臓を動かさず止める驚きの仕組みと最新救命手順に関する知りたいポイントを初心者にも親しみやすくまとめました。要点を確実におさえることができます。

AEDが現場に到着した際、機械が「ショックは不要です」とアナウンスすることがあります。これは故障ではなく、自動体外式除細動器の適応波形を正しく判別した結果です。除細動が有効な波形と、無効な波形には明確な境界線が存在します。

ここで重要となるのが、心室細動と心室頻拍の違いです。心室細動(VF)は先述の通り心筋が無秩序に震える状態ですが、心室頻拍(VT:Ventricular Tachycardia)は心室が異常な高速拍動(毎分150〜250回程度)を起こす状態を指します。心室頻拍の中には脈拍が辛うじて触れる状態もありますが、拍動が速すぎて血液を押し出せず脈が触れない状態を「無脈性心室頻拍(pulseless VT)」と呼び、これはVFと同様に即座の除細動適応となります。

医学的に定義されている除細動が必要な心電図波形と、それ以外の心停止波形の比較データを以下にまとめました。

心電図波形の名称心臓の内部状態・特徴除細動(ショック)の適応救命現場での最優先アクション心室細動(VF)心筋が無秩序に細かく痙攣。波形は不規則なギザギザ。心拍出量はゼロ。適応(絶対的適応)1秒でも早いAEDショック放電と絶え間ない胸骨圧迫。無脈性心室頻拍(pVT)規則的だが異常に速い心室の電気的興奮。脈拍が消失している状態。適応(絶対的適応)直ちにAEDによる電気ショックを実施しリズムをリセット。無脈性電気活動(PEA)心電図上は波形が存在するが、心筋自体が収縮しておらず脈がない状態。非適応(効果なし)高品質な胸骨圧迫の継続、人工呼吸、原因検索(低体温・出血等)。心静止(Asystole)心臓の電気活動が完全に停止。心電図モニターはフラットな直線。非適応(禁忌的無効)AEDはショックを中止。直ちに胸骨圧迫を再開しアドレナリン投与へ。

総務省消防庁が公表している救急・救助の現況データや日本循環器学会の報告によると、心停止からの救命率と最新データは時間との過酷な戦いを裏付けています。心室細動による心停止が発生した場合、電気ショックが1分遅れるごとに救命率は約7〜10%ずつ直線的に低下します。救急車の全国平均到着時間が約9分であることを考慮すると、救急隊が現場に到着してから除細動を行っても、生存率は極めて絶望的な数字にまで落ち込みます。

しかし、倒れた直後に居合わせた市民(バイスタンダー)が迅速に胸骨圧迫を開始し、数分以内にAEDによる除細動を実行できた場合、1か月後の社会復帰率は50%を超える水準に跳ね上がります。ショック非適応の波形に対してAEDが放電を拒否するのは安全設計の証であり、音声で「ショックは不要です。ただちに胸骨圧迫を開始してください」と指示が出た場合は、迷わず胸骨圧迫を再開することがプロトコル上の正解です。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。