ヒアリに刺された際の人体の反応は、毒素の局所作用による「直接反応」と、個人の免疫応答による「全身性アレルギー反応」の2段階で進行します。医学的な危険度を正しく把握するためには、時間経過に伴う症状の推移を知ることが不可欠です。
刺傷直後から数分以内には、刺された部位に針で突かれたような激痛と灼熱感(Burning Sensation)が生じ、周囲が赤く腫れ上がります。その後、数時間から翌日にかけて、ソレノプシンの組織障害作用によって刺し傷の中心部に「白い膿を含んだ水疱(無菌性膿疱)」が形成されます。この膿疱はヒアリ刺傷に特有の所見であり、他の害虫刺傷と見分ける決定的な臨床サインとなります。
命に関わる最重篤な状態が、ヒアリによるアナフィラキシーショックです。海外の臨床手記や被災者の記録によると、刺されてからわずか5〜15分程度で「手のひらの激しい痒み」「全身の蕁麻疹」「喉の締め付け感と激しい息苦しさ」「めまいや急激な血圧低下」が一気に押し寄せると報告されています。以前にヒアリやハチに刺された経験がある人は感作されている可能性が高く、劇症化のリスクが跳ね上がるため、刺傷直後30分間の全身観察が生命を分ける分岐点となります。