日本野球機構の歴史において、この天覧試合が果たした社会的役割は計り知れない。それまで「興行」としての側面が強調されがちだったプロ野球は、国家元首の観戦と劇的な幕切れを経て、社会的に広く認知された「国技」に匹敵する地位を確立した。
日本プロ野球史を概観したとき、観客動員数やビジネス規模の拡大の起点となったのは紛れもなくこの夜である。選手たちのステータスは飛躍的に向上し、子どもたちが将来なりたい職業の筆頭に「プロ野球選手」が挙げられる時代の扉が開かれた。グラウンドで繰り広げられた9回裏のドラマは、業界全体の命運をも塗り替えたのである。