「元気がある」という事実は安心材料の一つですが、犬は本能的に体調不良を隠す習性がある動物です。一見元気そうに振る舞っていても、水面下で病態が進行しているリスクを排除してはなりません。家庭内で冷静に見極めるための動物病院の受診目安を把握しておくことが極めて重要です。
そのまま様子を見てよいのは、「腹鳴以外の全身状態が完全に正常である場合」に限られます。具体的には、呼びかけに対する反応が良い、散歩に行きたがる、普段通りの便が出ている、歯茎のピンク色が保たれている、といった条件を満たしている場合です。この場合は半日ほど安静を保ち、胃腸を休ませるアプローチで自然治癒することが大半です。
一方で、以下のような症状が重複して確認された場合は、警戒レベルを一段階引き上げる必要があります。
まず警戒すべきは、犬の急性胃腸炎の初期症状です。お腹が鳴り始めてから数時間後に背中を丸めてじっと動かなくなる(腹痛のポーズ)、しきりに祈るような姿勢(前足を伸ばして胸を床につけ、お尻を高く上げる「祈りの姿勢」)をとる、よだれを大量に垂らすといった仕草は、強い腹部痛を訴えている証拠です。これらは犬の下痢嘔吐の前兆サインであり、放置すると脱水症状を招きます。
さらに、一刻の猶予も許されない致死的な疾患として犬の胃拡張胃捻転症候群(GDV)が存在します。大型犬や深胸犬(胸が深い犬種)に好発しますが、小型犬でも発症例はあります。胃の中にガスと液体が急激に溜まって胃がねじれ、血流が遮断される病態です。短時間の間に犬の腹部膨満とガス溜まりが進行し、お腹が太鼓のようにパンパンに張る、吐こうとしても泡しか出ない「空嘔吐」を繰り返す、呼吸が浅く速くなるといった異変が現れた場合、数時間で命に関わるため夜間であっても救急動物病院へ駆け込まなければなりません。
加えて、室内で遊んでいる最中におもちゃの破片や布類を飲み込んだ心当たりがあるなら、異物誤飲の可能性と確認方法を念頭に置く必要があります。胃や腸閉塞を起こしかけている初期には、激しい腹鳴と一時的な元気の維持が混在することがあります。家の中に噛みちぎられた破片が落ちていないか、便の中に異物が混入していないかを物理的に確認することが不可欠です。