インターネット上の掲示板やSNSでは、「エアコンが冷えない時は黄色いカー用品店やスタンドでガス缶を1本入れれば直る」という言説が今なお散見されます。しかし、整備の現場ではこの安易な処置が命取りとなり、数十万円の余計な出費を強いられるケースが後を絶ちません。
最大の落とし穴は「ガスの過充填(オーバーチャージ)」です。カーエアコンは、規定のガス量よりも多すぎても少なすぎても冷えなくなります。冷媒が過剰に詰め込まれるとシステム内部の圧力が異常上昇し、コンプレッサーに致命的な過負荷がかかります。現代の車両には安全保護回路が備わっているため、高圧を検知したセンサーがコンプレッサーのマグネットクラッチを強制切断し、結果として「ガスを入れたら余計に生ぬるい風しか出なくなった」という皮肉な事態に陥るのです。
さらに見過ごせないのが「エアコンフィルターの目詰まり」です。吹き出し口からの風量が極端に低下している車両の多くは、単に数年間交換されていないフィルターにホコリや枯葉がビッシリと堆積しているだけというケースが頻発しています。高額な修理代金を支払う前に、グローブボックス奥のフィルターを取り出し、光にかざして目詰まりがないか確認するだけでも、無用なトラブルシューティングを大幅にスキップできます。