犬は優れた嗅覚と聴覚を持っているため、視力が落ちていても住み慣れた自宅内では記憶を頼りに普段通り歩くことができます。そのため、外見的な白濁が目立つ前に現れる犬の白内障初期症状と見分け方を把握しておかなければ、気づいたときには未熟期以降まで進行していたという事態に陥りがちです。
特に見逃してはならないのが、日常の些細なしぐさに現れる老犬の白内障による行動変化の理由です。視覚の異変に起因する代表的なサインを分析します。
まず頻繁に観察されるのが、薄暗い環境への強い恐怖心です。夕方の散歩を露骨に嫌がるようになったり、照明の落ちた部屋や廊下に入るのをためらって立ちすくんだりします。犬の網膜には光を増幅する「タペタム(輝板)」が備わっており、本来は夜目が効く動物です。しかし白内障によって水晶体が混濁すると、夜間のかすかな光が網膜に届かなくなり、人間以上に暗所での視界を急激に奪われます。
続いて顕著になるのが、距離感のバグと空間認識の鈍化です。投げられたおもちゃを空中でキャッチできなくなったり、落ちたフードを鼻で探す仕草が増えたりします。さらに、階段やソファーの昇り降りを突然ためらう、部屋の敷居や床の色の切り替わりを深い溝と誤認して大げさに飛び越えるといった行動は、立体的な遠近感が消失している明白な証拠です。
さらに進行すると、犬の白内障視力低下と失明の前兆サインとして、飼い主が手を伸ばした瞬間にビクッと怯える「反射的な恐怖行動」や、壁伝いに体をこすりつけながら歩く「触覚依存歩行」が現れます。見えない方向から突然触れられることに強いストレスを感じ、警戒心から攻撃的になったり、逆に家族の後を片時も離れなくなったりする精神的な変容も現れるため、単なる加齢による頑固さや認知症と決めつけるのは禁物です。