全中標準記録という明確な数字は、中学生アスリートに強烈なモチベーションを与える一方で、過度な心理的負荷をかける要因にもなっています。スポーツ少年団や部活動、外部クラブチームの現場を取材すると、選手を取り巻く大人たちの過熱ぶりが浮き彫りになります。
ある強豪クラブの指導者は、近年の指導現場の実態についてこう吐露しています。「あと0.05秒で全中に行けるという段階になると、親御さんの熱量が異常に高まるケースが目立つ。食事や睡眠の管理だけでなく、毎日のラップタイムの推移を問い詰め、子どもがプレッシャーで呼吸を乱してスタートブロックにつけなくなる事例もある」。
SNSやネット掲示板上でも、保護者による「通信陸上で切れなかったらどうすればいいのか」「県総体までの2週間でタイムを伸ばす裏技はないか」といった悲痛な書き込みが散見されます。しかし、思春期の中学生の身体は骨の成長と筋肉の付き方がアンバランスになりやすい時期です。目先の全国大会出場に固執するあまり、疲労骨折やシンスプリント、アキレス腱炎などのオーバーユース(使いすぎ症候群)を抱えたまま強行出場し、高校以降の競技人生を棒に振るケースも少なくありません。