ネット上では「預金口座のマイナンバー付番が完全義務化され、預金封鎖や財産没収が始まる」といった過激な言説が定期的に拡散されます。報道資料や国会答弁記録を精査する限り、現時点で口座付番が法的な完全義務として国民に強制されている事実はありません。罰則規定を伴う強制付番法案は成立しておらず、法的には依然として国民の意思に基づく建前が維持されています。
しかし、「義務化ではない」という言葉を鵜呑みにして無防備でいるのは早計です。制度設計の裏には、預金者が直視すべき口座付番のデメリットと注意点が存在します。
最大の懸念事項は、税務当局による資産把握の網が極限まで狭まる点です。国税庁は従来から強力な調査権限(質問検査権)を持っていますが、これまでは疑わしい対象者の口座を金融機関ごとに個別照会する必要がありました。全口座へマイナンバーが付番されれば、名義分散された隠し口座や親族間での不透明な資金移動が、システム照合によって即座に可視化されます。正当な申告を行っている市民には無関係である一方、生前贈与や副業収入の申告漏れを抱える層にとっては甚大な追徴リスクとなり得ます。
さらに、行政機関や金融機関のシステム障害、あるいはサイバー攻撃による個人情報流出の潜在リスクもゼロではありません。ひとたびキーとなる番号に全口座が紐付けられれば、情報漏洩時の被害範囲が単一の通帳紛失とは比較にならない規模に拡大する危険性を孕んでいます。