日本および世界におけるメンタル危機の現況は、個人の精神論では片付けられない深刻な水準に達しています。世界保健機関(WHO)の統計資料によると、世界中で年間72万人以上が自死によって命を落としており、とりわけ15歳から29歳の若年層においては死因の第3位を占めています。国内に目を向けると、厚生労働省および警察庁の統計データにおいて、令和5年(2023年)の日本の自殺者数は21,837人を記録し、小中高生の自死者数は513人と過去最多水準に達しました。2026年の現在においても、長期的な社会的孤立や経済不安、デジタル過多による疲弊が複合的に作用し、高止まりが続いています。
精神医学の臨床現場において、希死念慮の原因として最も警戒されるのが、脳疲労とうつ病の初期症状です。慢性的なストレスに晒され続けると、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの分泌が著しく低下します。このセロトニン不足ストレスが続くと、感情をコントロールする前頭前野の機能が低下し、扁桃体が暴走を始めます。その結果、物事を白か黒かでしか捉えられなくなる「全か無かの思考」に囚われ、普段なら受け流せるトラブルに対しても「もう死ぬしかない」という極論へ直結してしまうのです。