インターネット上でまことしやかに語られる「家庭用洗剤による黄ばみリセット術」ですが、検証の結果、「効く汚れ」と「1ミリも意味がない劣化」の境界線がはっきりと浮き彫りになりました。
まず、弱アルカリ性の性質を持つ重曹やセスキ炭酸ソーダ、オキシクリーンを用いた洗浄です。これらは酸性である「手の皮脂汚れや油膜」を中和・乳化して浮き上がらせる能力に極めて長けています。ケース表面がベタついていたり、タバコの煙によるヤニが付着している程度であれば、40度前後のぬるま湯に溶かして30分ほど浸け置きすることで、一定の透明感を取り戻せます。
一方で、SNSや動画サイトで頻繁に取り上げられる「ワイドハイター(酸素系液体漂白剤)への浸け置き+日光照射」には大きな誤解が存在します。かつて昭和・平成期のレトロゲーム機や古いPCキーボード(ABS樹脂)の黄ばみ抜きとして「レトロブライト」という手法が流行しました。これは過酸化水素と紫外線によって、臭素系難燃剤の結合を分解する化学反応を利用したものです。
しかし、高分子化学の専門データが示す通り、TPU素材のキノイド化による黄変に対して過酸化水素と日光を当てる行為は、かえってTPU自体の劣化を急速に加速させる自殺行為に他なりません。どれほど強力な酸素系漂白剤に数日間浸そうとも、分子構造が組み換わってしまったTPUを元の完全な透明状態に戻すことは科学的に不可能です。
また、研磨作用を持つメラミンスポンジ(激落ちくん等)で擦る行為も避けるべきです。目に見えないミクロン単位の無数のかすり傷がTPU表面に刻み込まれ、光が乱反射することで全体が白く曇り、すりガラスのような無残な状態へと悪化します。