大阪市24区の治安を議論する際、最も多用される客観的指標が「人口千人あたりの刑法犯認知件数(犯罪発生率)」です。警察庁および大阪府警の統計データをもとに、大阪市24区の犯罪発生率を算出すると、一般に「治安が悪い」と噂される下町エリアとは異なる顔ぶれが上位を占める結果となります。
数字の上で突出して高い数値を記録し続けているのは、中央区、北区、そして浪速区です。とりわけ中央区の犯罪発生率は大阪市平均の3倍以上に達する年もあり、データだけを見れば「日本屈指の危険地帯」のように映ります。しかし、ここに都市統計の大きな落とし穴が存在します。
犯罪発生率を算出する際の計算式は「発生件数 ÷ 夜間人口(定住者数)」です。キタ(梅田)を抱える北区や、ミナミ(心斎橋・難波)を抱える中央区は、夜間に寝泊まりする住民の何倍もの買い物客、ビジネスパーソン、外国人観光客が昼夜を問わず流入します。その結果、他所から来た人間が引き起こした犯罪や、来訪者が被害に遭った窃盗事件もすべて「その区の住民が住む街の数字」としてカウントされるため、統計値が実生活の体感以上に悪化して見える構造になっています。