ネット上の情報や一般的なまとめ記事では、「寒暖差対策には発熱インナーを一枚仕込んでおけば安心」という言説が頻繁に語られます。しかし、ここには大きな落とし穴が存在します。
レーヨンやアクリルを主成分とする吸湿発熱インナーは、安静時の微細な水蒸気を吸着して熱を発する構造になっています。そのため、気温15℃前後の日にこれを着用して少し早足で歩いたり、暖房の効いた電車に乗ったりすると、想定以上の汗をかいて繊維の吸湿キャパシティを瞬時に超えてしまいます。その結果、吸湿しきれなかった汗が冷え、皮膚表面温度を奪う「汗冷え」を引き起こし、むしろ着用前より激しい寒さを感じる原因となります。
アパレル開発の現場関係者が指摘するのは、「インナーの素材選定ミスこそが体感温度コントロールを崩壊させる最大の要因」という事実です。寒暖差が大きい季節に選ぶべきは、急激な発熱を促す合成繊維ではなく、適度な調湿性と保温性を天然レベルで備えた極細メリノウールや、疎水性ポリプロピレンをブレンドしたハイブリッド機能糸です。これらは過剰な汗を素早く外部へ逃がしつつ、必要なデッドエア(静止空気層)をキープするため、一日中室内外を行き来しても衣服内温度が破綻しません。