皮膚科の臨床現場において、蕁麻疹様血管炎の写真やアトラス(症例図譜)を見ると、一見して通常の蕁麻疹と酷似した紅斑(膨疹様局面)が広がっている。しかし、専門医がルーペや指先で触診を行うと、そこには歴然とした物理的差異が存在する。決定的な判別点となるのが、皮疹の持続時間、自覚症状の質、そして発疹が引いた後の皮膚状態の3要素だ。
通常の蕁麻疹は、真皮浅層の肥満細胞からヒスタミンが遊離し、血管透過性が一時的に亢進することで血漿成分が漏れ出す「一過性の浮腫」に過ぎない。そのため、個々の皮疹は数十分から長くても数時間、遅くとも24時間以内に跡形もなく消失する。一方で、蕁麻疹様血管炎は血管そのものに炎症が生じ、血管壁が破壊される「血管炎」であるため、同一部位に生じた皮疹が24時間から72時間以上にわたって留まり続ける。
自覚症状においても、通常の蕁麻疹が耐え難い「痒み」を主訴とするのに対し、蕁麻疹様血管炎では痒みが軽度であるか、あるいは「ピリピリ・チクチクする刺痛」や「灼熱感(熱をもったような痛み)」を訴える患者が約6割から7割を占める。さらに、臨床写真で最も特徴的なのは、紅斑の中央部に点状の紫斑(内出血)が混在し、皮疹が消えた後に茶褐色の色素沈着を残す点にある。